
シマノからたくさんのディスクブレーキローターが発売されているけれど、それぞれの違いって何なの?
グレードが低くて安価なものと、グレードが高くて高価なものでは何が違うわけ?
ローターを買う時に参考にしたいから、教えて貰えると助かるなあ。
こんな方にオススメの記事です。
【この記事で分かること】
- シマノに聞いた!ディスクローターのグレードによる違い
- 熱ダレでブレーキが効きにくくなる「フェード現象」とは何か?
- アイステクノロジー/フリーザ技術について
- 使い方に応じたディスクローターの選び方

自転車ショップでメカニックとして働く私が解説します!
実は今回の内容を一番に知りたかったのは、私自身なのです…(笑)
疑問が解決したので、記事にしてみました!
よければ参考にしてもらえると嬉しいです。
ディスクブレーキローターのグレードによる違い
シマノにはブレーキローターの種類が沢山あります。
ナローとワイドによる違いはあるとして、例えばナローの中でもいくつもモデルが存在します。
しかも、それぞれに互換性があり、別に形状で分けられているわけではありません。
ならば、ディスクローターの「グレードによる違い」って何でしょう?
どう変わっていく傾向にあるのでしょうか?
例えば自転車のフレームなら「より軽量」「より高剛性」になりますし、キャリパーブレーキなら「より軽い力で」「より軽量」「より高剛性」「結果、より制動力アップ」になっていきますよね。
それがローターの場合、どんな軸でより高性能になっていくのか。

結論、「放熱性」と「重量」の二軸でグレードアップしていきます。
とくに重視しているのが放熱性で、ブレーキ性能に大きな影響をもたらします。
…とあたかも自分が熟知しているように書いてますが、実はこれ、私も無知だったのでシマノ様に問い合わせをして勉強させてもらった内容です。
そのやり取りがどんな感じだったか、対話形式で紹介します。
(今回は録音してたわけじゃないので、ニュアンスだけで!)
シマノに「ローターの違い」聞いてみた【放熱性と重量】

すみません。勉強のために教えていただきたいのですが…
シマノさんからは沢山の種類のローターが出ていますよね。
正直、これらが「グレードによってどんな違いがあるのか?」がよく分かりません。互換性も一緒ですし。
「高級なローターほどよく効く」のだとしたら、その理由を教えていただきたいです。

そうですね。
ディスクローターはグレードが上がるにつれて…
- 放熱性がよくなる
- 重量が軽くなる
といった傾向、違いが出てきます。
特にローターは「放熱性」がとても重要で、熱がこもるとブレーキの効きが悪くなります。
種類が多いのは、どうしても「各グレードごとにモデルが存在するから」です。

「放熱性」ですか。
それは…
- 具体的にどんな違いがあるのですか?
- どのくらい変わるものなのですか?
まだまだ知識が浅くてすみません。

具体的にはですね…
- 低グレードのローターはステンの一枚板で、放熱性が低いです。
- グレードが上がるとローターの中央部分がアルミ、パッドの触れる表面がステンになり、放熱性が増します。
シマノの「アイステクノロジー」という技術です。
- 高級グレードになるとローターに“フィン”が付きます。
「アイステクノロジー フリーザ」という技術でさらに放熱性を高めます。
→ロード系のモデルでいうと、アルテグラ(RT-CL800)やデュラエース(RT-CL900)がそうです。
- 最高級グレードの900番台(RT-CL900/MT900/MT905等)になると、フィンにさらに放熱性を高める黒い塗装が付きます。シマノの独自技術です。
といった構造上の違いがあります。

“放熱性”がなぜ重要かといえば、ディスクブレーキが「熱ダレ」を起こすからです。
熱がこもると制動力がガクッと落ちてしまうのです。
「フェード現象」といいます。
最近ちょうど「バスが止まらず横転…」といったニュースがありましたよね。
あれがまさにそうで、ブレーキをかけ続けて熱がこもったからです。
だから制動力を高める、落とさないためには放熱性を高める必要があります。
低級グレードのローターと高級グレードのローターでは、環境によっては100度以上の違いが出るんですよ。
プロ選手なんかはものすごいスピードで走りますから、放熱性が大事になってくるのです。
逆に普通にサイクリングを楽しむくらいなら、ローターのグレードは高くなくても十分です。

よく理解できました!
ありがとうございます!
という内容で教えていただきました。
ディスクブレーキの制動力に関わるのが「放熱性」であることは十分に理解できましたし、放熱性を高めるためにいろんな工夫がされていることも学びました。
グレードが上がるほど値段が高くなるのも納得です。
【補足】アイステクノロジー/フリーザ技術
シマノの公式サイトで技術の解説がされているので、気になる方は見ると良いでしょう。
ちなみに、ローター側だけでなく、パッド側も放熱性を高めるためにフィンが付いたりします。
【補足】フェード現象について
熱ダレと聞くと「ベーパーロック現象」をイメージしたのですが、他に「フェード現象」というのがあるみたいですね。
詳しいサイトから説明文を引用します。(自動車に対する説明文ですが)
フェード現象も下り坂などでフットブレーキを使いすぎると、走行中にブレーキが効かなくなる現象です。ブレーキが効かなくなるという点ではベーパーロック現象と同じですが、ブレーキが効かなくなる原因が異なります。
フットブレーキを使いすぎるとブレーキパッドが非常に高熱になり、摩擦材の熱分解で発生したガス膜がブレーキローターの間にはさまることで摩擦力が減り、ブレーキの効きが悪くなるのがフェード現象です。
引用:https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-vaporlock-fade/
ディスクブレーキ ローターの種類
さて、違いを理解した上でローターの種類を見ると面白いです。
使用用途にあったものを選びましょう。
日本ではロードバイクの人口が圧倒的に多いですから、ロード系のナローローター(センターロック)だけ紹介しますね。
RT-CL900 デュラエースグレード
フィン付き、放熱塗装付き、最高級グレードのローターです。
RT-MT900より新しいモデルとして、この「CL900(とCL800)」が出ました。
RT-CL800 アルテグラグレード
フィン付き、放熱塗装無し、高級グレードのローターです。
SM-RT70 105グレード
105グレードのRT70は、アルテやデュラと違ってフィンがなくなります。
アイステクノロジー(アルミをステン板でサンドイッチ)は使われています。
SM-RT64 デオーレグレード
センターロックのナローローターで最も低グレードなのがSM-RT64。
(一応デオーレなので、MTBパーツに属します。)
特筆すべき技術は特に何もなしですね。(笑)
フィン無し、塗装無し、アイステクノロジー(アルミサンドイッチ)なし…なので、多分これがステンの一枚板ってやつだと思います。
105グレードのRT70との価格差は定価で1000円くらいなので、どうせならRT70を買った方がいいかなって印象です。
まとめ
最後に、本記事の要点をまとめます。
【ディスクブレーキローターのグレードによる違い】
- 放熱性と重量
- ローターにおける最も重視する点は「放熱性」
- 熱がこもるとフェード現象が起き、ブレーキが効きにくくなる
- 低グレードはステンの一枚板、高級グレードはアイステクノロジーやフィン付き、黒塗装付きになる
- 場合によっては100度以上の温度差が出る
- 調べてみた感じ、ローターを買うなら最低限105(RT70)以上がいいと思う
というわけで、以上です!
少しでも「勉強になった」と思っていただけたら幸いです。何より書いてる自分が一番勉強になりました。(笑)
ご覧いただきありがとうございました!