自転車のチェーンを交換する時、適正な長さにカットする必要があるんだよね?
自転車によって変わるらしいけど、イマイチよく分からなくて。
適当にやって失敗したら怖いなあ。
初心者の自分にも分かるように、チェーンの長さの決め方を教えて欲しい!
こんな方にオススメの記事です。
【この記事で分かること】
- チェーンの長さの決め方(アンプルピン、ミッシングリンク)
- 12速Di2/新型デュラ・アルテの特殊な長さの決め方
- シマノのディーラーマニュアルに沿った解説
- 記事内に登場する専門用語の解説
- カットする時に必要なアイテム
自転車ショップでメカニックとして働く私が解説します!
この記事に訪れた方は既に分かっていると思いますが、チェーンを交換する時は短く「カット」する必要があります。
なぜなら新品のチェーンは長めに入っており、自転車に合わせて適正な長さを決めなければいけないからです。
長すぎても、短すぎてもいけません。
ぶっちゃけ、「チェーンの交換作業」自体よりも、長さを決めることの方がややこしいくらいですね(笑)
そこで今回、「チェーンの適正な長さ」を出すための方法を解説します。
シマノのディーラーマニュアル(https://si.shimano.com/#/)に沿って、内容を分かりやすく、噛み砕いて説明していきますね。
初心者の方向けですから、安心してください。
ではどうぞ。
記事内の用語解説
まずは、記事内で使う用語の解説からです。
文章を短く、分かりやすく説明したいので、あらかじめ用語の意味を確認して下さい。
ちょっと詳しい方なら、知っているコトバも多いでしょう。
パッとみて理解できそうなら、飛ばしてOKです。
チェーンリング
フロントのギア部分を言います。
フロント2枚が主流ですが、3枚や1枚もあります。
アウター
フロントギアのうち、「一番重いギア」のことです。
インナー
フロントギアのうち、「一番軽いギア」のことです。
スプロケット
後ろのギアのことです。8-11速が主流です。
ローギア
スプロケットのうち、「一番軽いギア」のことを言います。
トップギア
スプロケットのうち、「一番重いギア」のことを言います。
〇(数字)T
ギアの歯数のことです。
「T = “t”eeth = 歯数」
例えば、「ローが28T」といったら、スプロケの一番軽いギアの歯数が「28」であることを指します。
リアディレイラー
後ろの変速機のことです。
リアディレイラーには2枚の歯(プーリー)が付いています。
シャドータイプ、ダブルテンション
ロードでいうと、いわゆる「新型ディレイラー」はシャドータイプと呼ばれます。
対して従来のが、ダブルテンションです。
ガイドプーリー
二枚あるプーリーのうち、「上部」にあるプーリーのことです。
テンションプーリー
二枚あるプーリーのうち、「下部」にあるプーリーのことです。
チェーン
本記事の内容であるチェーンですが、「チェーン」を構成するパーツの名称や用語も知っておいてください。
記事内で頻出します。
インナープレート、アウタープレート
よくみると、チェーンには「内側」「外側」の2パターンがあります。
- 内側をインナープレート
- 外側をアウタープレート
〇(数字)リンク
「+2リンク」とか言ったりします。
チェーンのプレートごとに、「〇リンク」となります。
<インナー・アウター>の組み合わせだったら、2リンクです。
※2リンク=1コマとも言いますが、本記事では「リンク」に統一します。
アンプルピン
チェーンの結合に使う「ピン」のことです。
ミッシング(クイック)リンク
チェーンの結合に使うアイテムのことです。
KMCはミッシングリンク、シマノはクイックリンクといいます。
本記事では「ミッシングリンク」で統一します。
チェーンのカットで使う工具
チェーンカッターを用意してください。
カットする時に使う工具です。必須。
あとでチェーンをつなげる時にも使います。(ピンの場合)
使いやすくておすすめなのは、シマノのチェーンカッター。
「11段対応」としか書かれていませんが、8速から11速まで全て使えます。
もう少し小さいのがいい方は、こちらがいいですよ。
ただ小型の方が、作業性は落ちます。
作業性重視か、コンパクト重視かで選んでみてはいかがでしょうか。
自転車のチェーンの長さの決め方は?
いよいよ、本題について解説していきます。
チェーンの長さの決め方ですが、一番簡単な方法は「元々付いていたチェーンに合わせる」です。
チェーンだけ変える時は、この方法でOK。
初心者でも間違えることがないので、超簡単です。
しかし、スプロケやチェーンリングの歯数を変えるとか、初めてチェーンを付ける時は、長さを出さなければいけません。
ここからが難しい。
結論を言うと、チェーンの長さはこのように決めます。
よくある組み合わせを、赤字にしています。
【フロントダブルギア】
- 最大スプロケット(ローギア)が28T以上の場合
→アウターロー+2リンク - 最大スプロケットが27T以下の場合
→アウタートップでプーリーが地面と90度以上
※ただし、シャドータイプ(新型)のリアディレイラーの場合、ローの歯数に関わらず「アウターロー+2リンク」を使います。
【フロントトリプルギア】
- 最大スプロケットが32T以上の場合
→アウターロー+2リンク - 最大スプロケットが30T以下の場合
→アウタートップでプーリーが地面と90度以上
ただしこれは「アンプルピンで結合する場合」でして、ミッシングリンクの場合はそれを考慮しなければなりません。(あとで解説します)
色々パターンがありますが・・・
基本的に「アウターロー+2リンク」と覚えておけばOK。
フロントダブルでも、トリプルでも。
よく分からなくなったら、とりあえず「アウターロー+2リンク」にしておけば、間違いないです。
「アウタートップでプーリーが地面と90度」と覚えていた方も多いかも知れませんが、最近はあまり使いません。
28T以上が主流になったことと、シャドータイプのRDが増えてきたからです。
すでに頭が混乱していることでしょう。
詳しく解説します。
元々付いていたチェーンに長さを合わせる方法
「今現在付いている古いチェーンと交換するだけ」という方は、簡単です。
古いチェーンに長さを合わせて、カットすればいいのですから。
多くの方はこの方法でいいでしょう。
まずは、簡単なこちらから。
手順1:古いチェーンを切る
古いチェーンを切ってください。
切る場所はどこでもオッケーです。
チェーンカッターをセットして、ハンドルを回すと切れます。
手順2:古いチェーンと一緒に並べる
古いチェーンを自転車から取り、一直線に置きます。
それに合わせて、新品のチェーンも一緒に並べてください。
このとき、先端の種類(インナー、アウター)が同じになるようにしましょう。
出だしを揃え、指でつまんで寄せ合い、最後まで揃えます。
手順3:同じ長さでカット
すると、古いチェーンと同じ長さが分かりますよね。
指を指している位置がそうです。
古いチェーンは「伸び」ていますから、揃えたときの間隔にズレが生じるでしょう。
先端から順に1リンクずつ、しっかり合っているか確認して下さい。
ここでチェーンをカットすればOK。
これなら長さを間違うことはないですよね。
チェーンの長さをイチから測る方法
上記の方法でできない方。
例えば、
- スプロケットの歯数を変える
- チェーンリングの歯数を変える
- 元々付いていたチェーンの長さが分からない
という時は、これから紹介する方法で長さを決める必要があります。
正直、けっこうややこしいです。。
まずは、2つの要点を確認してください。
- フロントギアはダブル?トリプル?
- スプロケットのローギアの“歯数”は?
はじめに「フロンドダブル」、次に「フロントトリプル」の順に解説します。
【フロントダブルギア】チェーンの長さを決める方法
フロントダブルでも、さらに2パターンあります。
- 最大スプロケット(ローギア)が28T以上の場合
- 最大スプロケット(ローギア)が27T以下の場合
最近はロー28T以上の場合がほとんどでしょう。
また、シャドータイプのRDをお使いなら、ギアの歯数に関わらず「28T以上の場合」を参照してください。
最大スプロケット(ローギア)が28T以上の場合
「アウター×ロー」といっても、リアディレイラーには通しません。
チェーンをかけるだけです。
写真を参考に、同じ状態にしてください。
(チェーンフックは無くてOK。写真を撮るために使っただけです。)
そしたら、チェーンが余って重なる部分ができますよね。
ここからが肝です。
まず、「繋げられる最短距離」を探します。
“繋げられる”とはつまり、<インナープレート×アウタープレート>の組み合わせになるところです。
「1」まで届かないので、繋げることはできません。
ですから、「2」の黄点の場所が、繋げられる最短距離です。
そこからさらに「+2リンク」したところ(青点)が、カットをする場所です。
青点の場所でチェーンを切れば、適切な長さがでます。
あらためて、【アウター×ローの状態で繋げる最短距離+2リンク】です。
最大スプロケット(ローギア)が27T以下の場合
こちらのやり方は、チェーンをリアディレイラーに通して行います。
- 余ったチェーンを手で持ち、
- 繋げられる組み合わせ(インナー×アウター)で、
- 結んだラインが90度以上(写真参照)
になるようにして、長さを出します。
あまり使わないやり方です。
【フロントトリプルギア】チェーンの長さを決める方法
続いて、フロントトリプルの場合です。
2パターンあります。
- 最大スプロケットが32T以上の場合
- 最大スプロケットが30T以下の場合
最大スプロケットが32T以上の場合
つまり、長さの確認方法は「ダブルギア×28T以上」の時と同じです。
少しページを戻して、ご確認ください。
最大スプロケットが30T以下の場合
こちらの確認手順も、「ダブルギア×27T以下」と同じになります。
詳しくはそちらをご覧ください。
ミッシングリンクの場合は長さが変わる【1リンク減らす】
これまで紹介したやり方は、「アンプルピン」で結合する時のやり方です。
ミッシングリンクで結合する時は、カットする位置が1リンクだけズレます。
短くなります。
ミッシングリンク付きのチェーンを買うと、既に端がどちらも「インナープレート」になっているでしょう。
そのままで長さを出そうとすると頭が混乱するので、オススメの方法があります。
片方だけにミッシングリンクを差し込んでみてください。
こちらから見える、「オモテ面に」です。
すると、見かけ上、端が「インナープレート×アウタープレート」になりますよね。
そしたらあとは、先ほど紹介した長さの出し方と同じです。
- 「(見かけ上の)アウタープレート×インナーリンク」で繋げられる最短距離を探す
- +2リンクのところで切る
そうすれば、分かりやすくチェーンの長さを出すことができます。
【Di2/新型12速】デュラエース(RD-R9250)/アルテグラ(RD-R8150)のチェーン長の決め方
(↓2022年6月22日追記)
新型のデュラエース(RD-R9250)/アルテグラ(RD-R8150)をお使いの方は、チェーン長の決め方がこれまでの説明とは異なります。
現時点で12速のロードバイクに乗っているなら、要確認です。
チェーン長の出し方は以下のようになります。
現時点では凄く特殊。
まだ新型コンポを触ったことがないので、私自身このやり方でチェーン長を出した経験は無いです。
新型コンポをお使いの方は、覚えておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
あらためて、本記事の要点をまとめます。
【フロントダブルギア】
- 最大スプロケット(ローギア)が28T以上の場合
→アウターロー+2リンク - 最大スプロケットが27T以下の場合
→アウタートップでプーリーが地面と90度以上
※ただし、シャドータイプ(新型)のリアディレイラーの場合、ローの歯数に関わらず「アウタ×ーロー+2リンク」を使います。
【フロントトリプルギア】
- 最大スプロケットが32T以上の場合
→アウター×ロー+2リンク - 最大スプロケットが30T以下の場合
→アウタートップでプーリーが地面と90度以上
【Di2/12速/新型デュラ・アルテ】
- チェーンをRDに通さない状態で、アウター×ローに掛ける
- スプロケット側で始点-終点を作り、“ゼロ点”を確認
- ゼロ点にあるのが“インナーリンク”か“アウターリンク”かによって、2-3リンクを加える
スプロケやチェーンリングの歯数を変えるなら、長さの測り直しが必要。
しかし、チェーンを変えるだけなら、元の長さに合わせてカットすればOKです。
そちらの方が、幾分かラクチンですね(笑)
長さを間違えることもないと思うので、不安なく作業ができるでしょう。
初心者の方でも大丈夫!
チェーン交換の際に、本記事の内容がお役に立てれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました!