シマノの12速チェーンには、一部高級グレードに「クロマイジング表面処理」が使われているよね。
(参考記事: 【シマノ】12速チェーンの種類と違い解説 )
これまでのチェーンでは、高級帯と言えば「シルテック表面処理」が定番だったのに、12速に限っては、シルテックよりも上位モデルにクロマイジング処理が使われている。
これってなぜなのかな?
普通に考えて、シルテック処理よりもメリットがあるから高級なんだよね?
- クロマイジング処理のメリット
- シルテックとの違い
これらを教えて貰えると嬉しいなあ。
こんな方にオススメの記事です。
【この記事で分かること】
- シマノ12速チェーンのどのモデルにクロマイジング処理が使われているのか?
- なぜ、12速チェーンのインナーリンクに(初めて)クロマイジング表面処理が採用されたのか?
→シマノに聞いてみました - クロマイジング処理が優れている点
- シルテックとクロマイジング処理の特徴の違い
- CN-M7100(SLXグレード)チェーンが一番コスパがいいと思う理由
自転車ショップでメカニックとして働く私が解説します!
正直、チェーンの表面処理のことはよく分からないので、シマノのサポートセンターに電話をして聞いてみました!
- チェーンのことを勉強したい方
- 12速チェーンの違いを詳しく知りたい方
- クロマイジング処理の特徴を知りたい方
こんな方に参考になると思います。
【まずスペック把握】12速チェーンの違い
「クロマイジング処理がなぜ使われているか?」の結論をお伝えする前に、まず確認すべきは「12速のどのモデルにクロマイジング処理が使われているか?」を知ることですね。
シマノの電子カタログにある表を見ると分かります。
(先日書いた記事 【シマノ】12速チェーンの種類と違い解説 でもまとめました。)
12速チェーンは執筆時現在で4モデルあり…
- インナーリンクの表面処理に「クロマイジング」が使われているのは上位2モデルのみ。XTRとXTグレードです。
- CN-M7100(SLX)になるとシルテック表面処理になります。
- CN-M6100(DEORE)になるとブラウン…つまり表面処理ナシになります。
なお、ピンは全て「クロマイジング(表面処理された)リンクピン」が使われています。
私が本記事を執筆するきっかけとなったのが、12速で初めてインナーリンクの表面処理に“クロマイジング処理”が使われたという点でした!
私はこれまで全段数のチェーンの違いを分析・勉強してきました。
(気になる方は↓のまとめ記事をご覧ください)
シマノはこれまで、上位モデルのチェーンにはシルテックコーティングを使う、あるいは使う部分を増やすのがいつものパターンでした。
例えば11速チェーンなら安い順に…
→インナー、アウター、ピンがシルテック(701)
→インナーアウター・ピン・ローラーがシルテック(901)
となったりします。
ここで言いたいことは「シマノの出来る最高級の表面処理がシルテックだった」ということです。
しかーし、12速で新しくインナーリンク処理に「クロマイジング」が追加されたわけです。
シルテックを使ったSLXグレードよりも上位にクロマイジングが使われているということは、つまり、「クロマイジング処理は、シルテック以上に優れている点がある」と考えるのが普通でしょう。
“シルテック”に関しては、シマノにテクノロジーの解説ページが載っています。
しかし、“クロマイジング”は説明が無いんですね。
だから疑問に思いました。だから質問してみました。
その結果をお伝えします。
【シマノに聞いた】12速チェーンに「クロマイジング表面処理」を使う理由
結論からいうと「12速チェーンでは耐久性を重視するから、クロマイジング処理を使った」でした。
クロム処理をすることで…
- 耐食性アップ(錆びにくさ)
- 耐摩耗性アップ(削られにくさ=寿命が長い)
というメリットがあります。
せっかくなので、私がシマノの方に問い合わせたときの内容を、会話形式で紹介したいと思います。
お世話になります。
12速チェーンで質問がありまして…
- なぜ、初めてインナーリンクの表面処理に「クロマイジング」を使ったのですか?これまではリンクピンだけでしたよね。
- 12速の上位グレードにクロマイジングということは、シルテック以上に優れている点があるということですか?どんな違いがあるのでしょう?
メカニックとして、チェーンの違いを知っておきたいので、勉強のために教えてください。
そうですね。
12速チェーンの上位モデルにクロマイジング処理を使ったのは、主に「耐久性(寿命の長さ=チェーンの伸びにくさ)」を重視したからです。
12速チェーンはスプロケットの段数増加に伴い、チェーンの外幅が薄くなっています。
そのため、より段数が少ない(=厚い)チェーンに比べて、負担が掛かりやすいのです。
そこで、耐久性を上げるためにクロマイジング処理を施しました。
クロマイジングとシルテックの違いですが、簡単に言えば「硬く仕上げる処理」か「滑りを良くする処理」かの違いです。
【クロマイジング】
金属をクロム処理するもの。
“表面を硬く仕上げる”ことで、特に耐摩耗性を向上させています。
【シルテック】
シルテックはいわゆる「テフロン加工」のことです。
“滑りを良くする”ための表面処理ですね。
結果、「回転摩擦の軽減」「チェーンノイズの軽減」「泥はけ性能アップ」「耐摩耗性の向上」※HP参照というメリットがあります。
なるほど。
今のお話しを聞いて疑問に思ったのですが…
- 12速チェーンは薄くて負担が掛かりやすい(寿命が短い)なら、なぜ全てのモデルを「クロマイジング処理」にしなかったのでしょうか?
- それと、「耐久性」を特に重視して上位モデルがクロマイジング処理ならば、シルテックコーティングのCN-7100に比べて性能面では落ちるということですか?
んーそうですね…
全てのモデルをクロマイジング処理していないのは、「コストの問題」が大きいです。
クロマイジング処理はシルテックに比べてコストが高いんですね。
(※シルテックが4693円、上位2モデルが9330円と6096円)
ですから、言い方は悪いですが価格を落とすためにCN-M7100のシルテックコーティングや、CN-M6100のブラウン(コーティング無し)となっています。
おっしゃられたように、クロマイジング処理に比べて若干耐久性は落ちますね。
確かに、クロマイジング処理の方が、シルテックに比べて回転性能などは少し劣るかもしれません。
でも本当にごくわずかで、それを人間感覚で感じられる人はまずいないレベルですね。
大変勉強になりました!
ありがとうございます。
要点をまとめますと、以下のようになります。
おすすめの12速チェーン
今の話を聞いた上で個人的に一番オススメするチェーンは「CN-M7100(SLXグレード)」ですかね。
上位のクロマイジング処理が「寿命を延ばすため」とのことですが、表面処理で寿命が延びると言っても、せいぜい500㎞くらいかなと思います。
例えば、
- 11速の105チェーン(インナーリンクのみシルテック)
- 11速のデュラエースチェーン(インナー、アウター、ピン、ローラーがシルテック)
を比べたテストをした時、105が約2400㎞で寿命、デュラが約3000㎞で寿命に到達したそうです。
コーティングの違いで600㎞程の違いになりますね。
耐久性を伸ばすと言っても、寿命が2倍になるとかいうわけではないんです。
ならば、クロマイジング処理の高いチェーンを買うより、シルテック処理のCN-M7100を買って、寿命が来たら交換していた方が結果的に安くなりますよね(笑)
一番安いCN-M6100は特にコーティングがされていません。
「ブラウン」というのはだいたい各グレードの安いチェーンに使われている表記ですが、すごく錆びやすいのであまりオススメはしないですね。
重量を重視する方なら、中空ピンの「CN-M9100」もいいかもです。
CN-M9100のみ重量が242g、他3モデルは252gです。
まああらためて、自分事に置き換えてチェーンを選ぶなら、CN-M7100にしますね。
さいごに
今回シマノに問い合わせをしたことで、すごく勉強になりました。
聞いてみないと分からないものです。
この情報をシェアすることで、参考になればと思います。
ご覧いただきありがとうございました!