上の写真のような形をしたシマノのクランクを使っているんだけど、クランク本体やチェーンリングの着脱方法を教えてほしい。
初心者にも分かりやすいよう詳しく解説されていると嬉しいんだけどな・・・
こんな方にオススメの記事です。
クランク本体を交換したり、チェーンリングを変えたり、油汚れを綺麗に掃除したりしようとするときに必要なのが「クランクあるいはチェーンリングの着脱作業」ですよね。
自分でやってみようと思う気持ちはあるものの、「本当に初心者の自分ができるのだろうか」と不安に思ってチャレンジできない方も少なく無いはずです。
でも大丈夫。そんな方の悩みを解決するためにこの記事を書きました!
必要な情報を60枚の写真を使って徹底的に解説しているので、不安なく取り組んでいただけると思います。
また、グリスアップが必要な場所やパーツの洗浄方法についても紹介していますので、初心者の方でも安心です。
この記事を参考に、是非チェレンジしてみてくださいね!
- シマノ製(ホローテック2)のクランク・チェーンリングの着脱方法
- 外したクランクを綺麗に洗う方法
※なお現行モデル(ロード)でいうと、クラリス、ソラ、105、ティアグラ、アルテグラ、デュラエースの全てがこのタイプのクランクです。
※スクエアテーパータイプのクランク着脱方法を知りたい方はコチラ
はじめに
多くの方は今ついているクランクを外すところから作業が始めると思いますので、このような流れで作業工程を説明していきます。
- 用意する工具・アイテム
- クランクの外し方
- チェーンリングの外し方
- チェーンリングの取り付け方
- クランクの付け方
- パーツの洗浄方法
クランクの交換作業だけでいいという方は「2→4」へと飛ばしてご覧ください。
ただ、「洗浄」が目的であればチェーンリングも外した方がきれいになります。作業自体も簡単なので、掃除だけの場合でも全て外すのがオススメです。
なお、洗浄方法は記事の後ろの方に載っておりますので、読者の皆様が必要になったタイミングでお読みくださいませ。
では、作業の説明に参ります。
用意する工具・アイテム
あるといいもの(工程内で説明します)を含めると、全ての作業で使ったアイテムはこんな感じ。
絶対に必要なアイテムだけを書き出すとこうなります。
- 5mmの六角レンチ
- クランク取付工具
- T-30のトルクスレンチ
たった3つのアイテムさえあれば、クランク・チェーンリングの脱着作業ができます。
次に、各作業ごとに必要なアイテムを紹介します。
クランク本体の着脱に必要なアイテム
クランクのみの付け外しに必要なのはこの2つの工具だけです。
・5mmの六角レンチ
チェーンリングの着脱に必要なアイテム
チェーンリングの脱着に必要なのは、
トルクスレンチとは☆の形をしたネジのことで、六角レンチとは異なります。
~ここからが「あったらいいもの」~
チェーンリングのボルトにもグリスアップをするため、先ほど紹介した粘土の高いグリスか、スプレーグリスがあるといいです。
自転車のメンテナンスでは使いどころがたくさんあるので、これからメンテナンスを始めようとしている方は持っておいて損はありませんよ。
オススメの工具
これらの作業を行うには、改めて3つの工具が必要になることが分かりました。
- 5mmの六角レンチ
- T-30のトルクスレンチ
- クランク取付工具
今紹介したように一つ一つの工具を揃えてもいいのですが、クランク交換を迅速化させるために便利な工具があります。それがこちら。
専用工具の「クランク取り付け工具」を除いた
- 5mmの六角レンチ
- T-30のトルクスレンチ
の機能を一つにまとめたシマノの純正工具です。
力も入れられる上に必要な機能が一つに備わっているので、作業スピードが上がってとっても便利でオススメですよ。
シマノ製クランクの外し方
ではいよいよ交換作業に入ります。
①下準備:チェーンを落とす
クランクを外す前の準備としてチェーンを外しておきます。
まず最初に、ギアを「インナートップ(前が軽くて後ろが重い)」の位置にセットしておきます。
この位置が一番チェーンの張りが弱い位置になるので、今後の作業がしやすいからです。
次にチェーンを落としていきます。
下の写真を参考にチェーンを持ち上げて・・・
少し引っ張りながらギアから脱線させ・・・
このように落としておきます。
フレームへのダメージが気になる方はあらかじめタオルなどを挟んでおいてくださいね。
②脱落防止ピンを上げる
左クランクのこの”隙間”には、万が一クランクが緩んでもポロッと取れないように脱落防止のピンが入っています。
このピンを上に「クイッ」と持ち上げて、クランクを外す準備をしましょう。
爪を使って行うこともできますが、力が入らなければ「先の細いもの」を使ってやると良いです。
③クランク取付工具でフィキシングボルトを外す
次に、クランク取付工具を使ってフィキシングボルトを外していきます。
左クランクの形が合う凹みに挿入し・・・
手で反時計回りに回して緩めていきます。
外れました。
手で緩めようとしても固かった場合は、プライヤーなど掴む系の工具を使って回すと力が入れやすいです。
実は元から柄のついた力の入れやすいタイプもあるんですが、一つの機能しか持たない上に安くはないので、よほど頻繁に作業する方以外にはもったいないでしょう。
④5mmの六角レンチで2本のボルトを緩める
そうしましたら、5mmのアーレンキーを使って左クランクのボルト二本を緩めていきます。
完全に抜く必要はないので、ゆるゆるにしたまま付けておけばオッケー。
⑤左右のクランクを取り外す
左クランクから
引っ張って、左クランクをすぽっと抜きます。
前後にカタカタと揺らしながら引っ張ると抜きやすいです。
次に右クランク
左クランクが抜けたら、同様に右クランクも引っ張るだけで抜くことができます。
この時に手の力だけで抜くのが難しい時は、反対側(左クランク側)から叩きましょう。
相手を傷つけないゴムハンマーがベストですが、無い時はあて布をしたり、クランク取付工具をクッション材として使ったりして衝撃を加えます。
クランクの取り外しが完了
無事できましたか?
これにてクランクの取り外し作業が終了です。
チェーンリングの外し方
続いて、外したクランクからチェーンリングを外す方法を説明します。
①T-30サイズのトルクスレンチを使って4つのボルトを緩める
「T-30」というサイズのトルクスレンチを使って、チェーンリングを固定している4つのボルトを反時計回しで外していきます。
外れました。
②チェーンリング(インナーギア・アウターギア)を取り外す
あとはついているギアを外すだけ。
これでチェーンリングの取外しが完了です。
必要であればこのタイミングで洗浄作業を行いましょう。
チェーンリングの取り付け方
いよいよ組み立てパートに移ります。
①下準備:ネジ山にグリスを塗布
4つのネジ山にグリスを塗っていきます。
②アウターチェーンリングを取り付ける
アウターリング(大きいほう)をセットしていきます。
チェーンリングを装着する時に注意することが2つあります。
- 裏表
- 位置
です。
向きは写真を参考にしてください。よっぽど大丈夫だと思いますが(笑)
大切なのが「位置」で、↑の銀色の突起がある場所をクランクアームの真裏にくるようにしてセットします。
こんな位置関係ですね。
セットできましたか?
③インナーチェーンリングを取り付ける
次にインナーリング(小さいほう)をつけていきます。
インナーリングにも「表裏」と「位置」がありますので注意してください。
まず、↓のような文字がある方を自分から見て表側にしてください。
つまり、装着したときにはフレーム側を向きます。
次に説明するのが位置です。
一か所ある「突起」を、アウターと同じようにクランクアームと同じ位置に合わせてください。
正しい取付がこちら。
④4つのボルトを締める
あとはボルトを締めていくだけ。
本締めを行ったら、再度もう一周確認しましょう。
クランクの取り付け方
いよいよクランクの取付作業です。
これが終われば一連のメンテナンスが終了です。がんばって!
①下準備:BB内とクランク軸の掃除&グリスアップ
BB内に元々付いていた汚いグリスをふき取り、新しくグリスアップします。
ふき取り時、BBに直接パーツクリーナーをかけるのはNG。
ウエスにクリーナーを吹き付けたうえで掃除しましょう。
グリスアップはBBの筒内に指で塗りこむか、クランク軸に薄く塗ります。
②右クランクの軸を挿入
グリスアップしたクランク軸をBBへ挿入します。
このとき、全て差し込む前にチェーンをギアに戻しておいてください。
下から引っ張るようにして手繰り寄せるとやり易いです。
その状態で最後まで押し込めばOK!
③左クランクを取り付ける
反対側の左クランクに作業を移します。
BBから出た軸の切込み(内側と外側)にグリスを塗ります。
次にクランクアームをはめ込みます。
気を付けるのは位置だけで、反対のアームと一直線になるようにして取り付けましょう
ちゃんと奥まで押し込んだら次の工程に移ります。
④フィキシングボルトを締める
先ほど外したフィキシングボルトを取り付け、専用工具で時計回りで回していきます。
力加減はペットボトルのフタを締め切るくらい。
ガッチガチに締めてはいけません。
「これくらいかな?」と思ったら締めるのをやめ、
- ペダル(クランク)を回して異常に回転が渋くないか確認
- クランクを揺らしてあまりにもカタカタしてないか確認
してください。
まだボルトを締めていないので、少しのガタツキは生じますが心配ありません。
この工程では締めすぎによって回転が渋くなっていないかをメインにチェックしてください。
⑤2本のボルトを締める
「よさそうかな?」と思ったら、いよいよボルトの本締めです。
1つのボルトを一気に占めるのではなく、交互に、そして段階を踏んで力を加えていきましょう。
最終的な本締めのトルクは「12-14Nm」となっています。
これがどのくらいかというと、結構ガッチリ締めるって感じですね。
もし締め付け加減に不安がある場合は、トルクレンチを使って力加減を計測するのが一番正確でオススメです。
⑥ガタツキの最終チェック
ボルトを締めた後に改めてガタツキがないかチェックします。
両方のクランクアームを両手で握り、左右に動かしてみてください。
カタカタと動かなければOK。
もし動くようなら④でのフィキシングボルトの締め付け不足が原因です。
⑦脱落防止ピンを戻す
最後の最後。
気を抜かずに脱落防止ピンをを下ろして完了です!
お疲れさまでした!
よくある失敗
クランクの着脱は上手くいきましたでしょうか?
初心者によくある失敗例を紹介します。
フィキシングボルトの締め過ぎ
あまりにも強く締めすぎていませんか?締めすぎはクランクの回転を悪くします。
適性トルクは1-1.5Nmと軽い力で十分です。
今一度ペダルを回してみて、あまりに重たくないか確認してみましょう。
ボルトをなめてしまった
クランクのボルトや、チェーンリングのトルクスねじを傷つけてしまったら、なるべく交換した方がいいです。
「まだ使えそうだから」と使い続けていると、最悪の場合ネジが抜けなくなります。
ネジ穴の形を変形させてしまった時は、できるだけ新品に交換するようにしましょう。
チェーンリングの位置や向きが違う
チェーンリング取付の際に気を付けなければいけない
- 位置
- 向き
合っていますか?
間違っている場合ギアにある変速ポイントがずれてしまい、変速性能が落ちます。
慣れていない方は入念に確認しましょう。
クランクを綺麗に洗う方法
クランクが汚れていると、チェーンをいくらきれいにしたところですぐに黒ずんでしまいます。
せっかくですからこの際に洗浄してしまいましょう!
自転車のパーツを洗う時に使うイチオシのアイテムがコチラ。
ワコーズのチェーンクリーナーですね!
チェーンのみならず、しぶとい油汚れを溶かしてくれるので本当にきれいになります。
付属でブラシがついてくるので、別途用意しなくていいのも魅力的。
実際にこのアイテムで洗浄してみたクランクのビフォーアフターです。
1万キロ以上使ってたまりにたまった油汚れが、一滴残らず落ちています。
使い方は簡単で、吹きかけてちょっとした後にブラシでこすって水で流すだけ!
もちろん、スプロケットやチェーンにもお使いいただけます。
パーツクリーナーと違って噴射の力で落とすのではなく、油を溶かして落とすので、パーツクリーナーのように「表面の汚れしか取れない(泣)」と悩むことはなくなりますよ。
成分がほとんど変わらない液状タイプの「パーツディグリーザー」もありますので、ぜひどちらかを使ってみてください!感動するほどきれいになりますよ。
「スプロケットもキレイにしたい!」という方は、こちらの記事を参考にスプロケの着脱を覚えていただくことでチェーン周りの汚れを取り除けますよ!
手の油汚れが気になる時は
自転車のメンテナンスをすると、どうしても手が真っ黒になって汚いですよね。
一般家庭にある固形石鹸では全く落ちず、食器用洗剤を使っても落ちは悪いです。
そんな時にオススメなのが油落とし用のハンドクリーナーです。
たった15秒で手がきれいになる優れモノなので、気になる方はぜひ使ってみてください。作業のストレスが一気に減ります。
まとめ
無事、作業は完了できたでしょうか?
チャレンジする前は「難しいだろうなぁ」と決めつけていたことも、やってみると案外簡単だったと思います。
特にクランクの着脱は初心者には難しい「ワイヤー類の調整」がありませんから、取り組みやすい内容でしたよね。
実は、自転車メンテナンスのほとんどがちょっとやればできることなんです。
是非これからも、取り組みやすい内容のものからチャレンジしてみてくださいね!
自分の知っている技術をより多くの方に知っていただき、「自転車の魅力」をメンテナンスという側面からも感じていただければ幸いです。
あなたがチャレンジしてくださったこと、大変うれしく思います。
この度はご覧いただきありがとうございました。