- サイクリング中にディレイラーハンガーが折れてしまった
- ディレイラーハンガーの予備は持っていない
- とりあえず走るための「応急処置」はどうしたらいいか?
こんなお悩みを解決します。
【この記事で分かること】
- ディレイラーハンガーが折れた際の応急処置
- 実際にやってみた結果、どうだったか?
自転車整備士の私が解説します!
先日、ビワイチをしていた時のことです。
私が走っている先に、自転車を担いで歩いている方がいました。話を聞くと、ディレイラーハンガーが折れて(スポーク巻き込み)走行不能になったそう。
予備は持っておらず、輪行袋もなく、どうしようか困っている状況でした。
そこで(自分で書くとアレですが)、私が応急処置をしてなんとか走れる状態にしました。
その後、その方は残り80km程度を走り切れたそうです。
「もしハンガーが折れたらどうすべきか?」を知っておくと、どこかで役に立つことがあるかもです。
特に長距離旅をする方は参考になるかなと思います。
前提として…
長距離ライドをするのであれば、そもそも「ハンガー折れ対策」はした方がいいです。
ディレイラーハンガーの予備を持てば解決します。あらかじめ注文しておき、パンク修理セットと同様に携帯しましょう。重量も軽いし、大きさも小さい。荷物にはなりませんから。
ハンガーを持っていれば、最悪の状況でも焦らずに済みます。
【予備無し】ディレイラーハンガーが折れた際、走るための応急処置
では本題です。ハンガー折れの応急処置を解説します。
必要なアイテム、スキルは下記の通り。
【アイテム】
- チェーンカッター
- 携帯工具
【スキル】
- チェーンの長さ調整、カット&結合、ピンの寸止め技術
- FD,RDの調整経験。各ボルトの理解。
応急処置には「チェーンカッター」が必須です。チェーンの長さが変わるからです。
一応、ない場合はRDのプーリーを外してチェーンを[スプロケ-フロントギア]に掛けて走ることもできると思いますが、だるんだるんになってまともに走れないでしょう。
普段のサイクリングだったらカッターを持ち運ぶ必要性は高くないですが、長距離ライドをするならチェーンカッター(付きの携帯工具)はお守りとして持っておくと安心です。
もちろん、それを使いこなせるだけのスキルも必要になります。
それと「ピンの寸止め」は、ピンを抜ききる直前でとめ、アウターリンクに刺さった状態のことです。こうすることで、応急処置的にピンの再利用(=再結合)が可能になります。
もちろん、再結合用のミッシングリンクやアンプルピンを持っていれば寸止めする必要はないです。
今回の状況
今回のケースは、スポーク巻き込みによるハンガーの折れでした。
おそらく、元々調整が甘かったか、ハンガーに曲がりがあったか…が巻き込みの原因だと推察します。
当時の状況の写真はありませんが、ライトウェイ様の記事内にある「検証3」の状態です。
参考:<検証③:ディレーラーハンガーが内側に曲がり、スポークにディレーラーのプーリープレートが引っ掛かり巻き込まれるとどうなるか>
スポークにRDが絡まり、ホイールも回転していませんでした。
応急処置でやったこと
最初に行った応急処置は下記です。
【まずやったこと】
- チェーンを切る(ピンを寸止めし残すこと!)
- RDからワイヤーの固定を外し、絡まったRDを外す
- RシフトワイヤーをSTIレバーから抜き取る(ぶら下がった状態は邪魔なので)
- Rホイールの着脱(ズレていたため)
- フレーム側に残ったハンガーの破片を外す(クイックが真っすぐ固定できなかったため)
この時の写真が無く、文字だけの説明になってしまいスミマセン。
応急処置は「スプロケ-フロントギア」にチェーンを掛けて、シングルギアのように使うというやり方です。ハンガーが折れているので、もちろんRD(変速)は使えませんからね。
なので一旦チェーンを切ってRDを外し、邪魔なワイヤーを引っこ抜きました。
さっきも言いましたが、チェーンを切るのは「できるだけたるみをなくすため」にチェーンを短くする必要があるからです。
RDがチェーンのテンションを張る機能を担っているわけですが、それがなくなりますからね。
でも再結合用のピンやミッシングリンクを持っていないと繋ぎ直せないので、カットする際は必ずピンを寸止めします。慎重に。
チェーンの繋ぎ直し
応急処置後の写真はあるので紹介します。
「こうやれば応急処置できる」とは知っていたものの、実際にその状況で行ったのは初めてでした。
チェーンステーに擦れるのを防ぐため、手持ちのダクトテープを貼りました。
チェーンを掛けた位置
チェーンを繋ぎ直すときは、ギア比を考えてフロント「ミドル」にしました。
リアはトップ。
より端数の大きいギアに入れても、振動でトップ側へ落ちてくると思ったからです。そうするとチェーンがたるんでしまうので、始めから[ミドル×トップ]で長さを合わせました。
フロントダブルならインナーでいいと思います。
FDの位置固定
フロントディレイラーのアジャストボルトをH,L側どちらもガン締めし、位置を固定をしました。
誤ってSTIレバーを操作し、チェーンが他のギアに変わるのを防ぐためです。
この自転車はフロント3段でしたが、インナーに入ってしまうとチェーンがたるみすぎるし、アウターに入るとチェーンがパツパツになって切れる可能性があると考えたからです。
特に今回は乗られていたのが初心者の方であったため、リスクを考えて動かないようにしました。
予想外の動きだった
元々は[ミドル×トップ]でチェーンを繋いだのですが、実際にホイールを回すとチェーンの位置が変わりました。写真のようにリアのトップ側3枚目まで移動したんですよね。
実際にやったのは初めてだったので、この動きは予想外でした。なるほどと勉強になりました。
おそらく、これは「チェーンライン」に向かって中央へ寄せられるからだと思います。
なるべくチェーンが真っすぐになる位置へ、漕ぐと勝手に移動するんですね。
ただし、テンショナー(RD)がないため、漕いでるときに後ろのギアが変わることがありました。
振動等によってより軽くなることもあれば、自転車の傾け具合によってトップ側に移動してしまったり。安定はしませんね。
もしロー側に移動してしまい、チェーンが張られたら、ペダルが急に重くなるはずです。絶対に力を加えないでください。切れます。
自転車から降りてペダルを逆回しにし、よりトップ側に落としてあげてください。
その後どうだったか?
応急処置後、私はこの方と別れました。
…がその翌日、またお会いしたんですよね(笑)
ビワイチなので、走るルートが一緒だったからです。
「その後どうでした?走れました?」と聞いたところ、「ギアが急に変わることはあるけれど、なんとか走れている!」とのことで安心しました。
無事にビワイチも完走できたそうで、こちらも嬉しかったです。
というわけで、ハンガーが折れた時でも応急処置をすればなんとか走れます。
家に帰れたり、最寄りの駅(輪行なら)にたどり着くことができます。万が一に備えて知っておくといい知識ですね。
帰宅後の修理内容
この自転車の場合、帰宅後にしっかりと修理をするには下記の内容が必要そうでした。
すごーくざっくり、1.5万円くらいの修理になるかなと思います。
確認すること
あらためて、ロングライドの前に確認すべきことです。
最悪の事態も想定し、輪行袋を持っておくと安心ですね。
ハンガー折れは突発的に(例:木の枝を巻き込んだ等)起こることもありますが、多くは元々の曲がりや整備不良が原因です。ロングライドをする前に、必ずチェックしておきましょう。
【補足】チェーン切れ時の対処方法も同様
ちなみにですが、チェーンが切れた時も再結合で対処できます。
ピンやミッシングリンクを持っていない場合は、とりあえず切れた場所をカットし、寸止めしてピンを残します。そして最短距離で再結合すれば、普通に漕げるようになります。
ただし長さが短くなるため、チェーンの張られる組み合わせ…例えば[アウター×ロー]等は長さが足りません。
このように再結合した場合は、フロントはインナー側のみで走ることをオススメします。インナーなら、リアはローからトップまで使えると思いますので。
まとめ
最後に、本記事の要点をまとめます。
【ディレイラーハンガーが折れた際、走るための応急処置】
- チェーンを寸止めで切り、RDを外す
- チェーンを適切な長さにカットし、寸止めピンで再結合
- フロントディレイラーを動かないよう、アジャストボルトで固定しておくと安心
一応、こんなふうにして最悪の状況を脱することができます。
よければ参考ににしてみて下さい。