こんにちは、かけるです。
今回は「ローノーマルとトップノーマル」についてお話しします。
というのも先日、私が働くお店でアルバイトの方に対して自転車の「変速」について説明をしていたところ、こんな質問がありました。
会話形式で振り返ります。
…というわけで、
- リアディレイラーはワイヤーを一番緩めた状態がトップ(重い)ギア
- ワイヤーを張っていくとロー(軽い)ギア
に変わっていきます。
その張り具合を微調整するのがアジャストボルトで…(省略)
すみません。ちょっと疑問に思ったのですが…
どの自転車も「トップギア」から始まり、ワイヤーを張っていくと「ローギア」に移っていくんですか?
なんか、中には違う自転車とかもあるんですかね?
中々マニアックな質問ですね…(笑)
一般人向けには「まあそうです」と答えます。
しかし、自転車業界人や知識を深めたい方に対しては「違います」と答えます。
「ローノーマル」と「トップノーマル」という概念があるからです。
昔はローノーマルの変速機もありました。
今ではほぼ全てがトップノーマルなので、わざわざ覚えなくてもいいくらいなんですけどね。(笑)
一応知っておいて損は無いと思うので、説明しますね。
てな感じの会話をしました。
会話中で出てくるアルバイトの方と同様に、多くの人が「トップノーマル」「ローノーマル」という概念を知らないはずです。
だいぶマニアックな話にはなりますが、本記事で解説しますね。
自転車知識の一つとして覚えていってください。
なお、「ローノーマル」が全盛の時代に、私はまだ自転車業に携わってもいなければ、興味もありませんでした。
その時代にプロとして機材に触れていたわけではありません。
そのため本記事内では“推測”からの考察や、“だろう”といったあいまいな表現が多くなります。
予めご了承ください。
リア/フロントディレイラーの「ローノーマル」と「トップノーマル」とは?
まずは言葉の理解から。
リア/フロントディレイラーに対する「ローノーマル」「トップノーマル」とは何を指すのか?
結論、「(FD/RDが)ノーマル状態の時、どのギアに位置するか?」を指します。
よく分からないと思うので、詳しく説明します。
以後の説明はとりあえず“リアディレイラー”を例に話します。
リアディレイラーの「トップノーマル」とは?
トップノーマルとは、「RDの初期位置がトップ側」のことを指します。
これまでにシフトワイヤーの交換や、ワイヤーの固定から変速調整をした方なら分かるかと思いますが、リアディレイラーはワイヤーを張らないと勝手に「トップ」に移動しますよね。
トップから始まり、ワイヤーを張る(シフトレバーを動かす)ことによってローギア(軽くなる)に移動していくわけです。
トップギアが初期位置。トップギアがノーマル状態。トップノーマルのリアディレイラーです。
お気づきかもですが、そう、現在の自転車のほぼ全てが「トップノーマル」のリアディレイラーを使っています。
トップノーマル以外のRDを見ることが無いので、もはや「これはトップノーマルのRDだ」なんて認識はしません。
それが普通だからです。他にあるの?って感じだと思います。
トップノーマル/ローノーマルという概念を知らない人が大半でしょう。
リアディレイラーの「ローノーマル」とは?
では逆にローノーマルというのが、「ローが初期位置になるRD」のことを指します。
「なにそれ?」という反応で正解です。今ではほぼ見ないから。
ワイヤーを張ってない初期状態がローギアにあり、ワイヤーを張っていくとトップ側(重くなる)に移動していきます。
今のトップノーマルとは逆ですよね。
これが“ローノーマル”のRDです。
ひとまず用語の解説だけ。次に詳しく解説します。
ローノーマルのリアディレイラーが出た経緯・歴史
ローノーマルRDの誕生
おそらくシマノで初めて「ローノーマル」のリアディレイラーが採用されたのが、960系のXTRです。2002年に誕生したシリーズです。
>>https://www.shimano.com/jp/100th/history/products/58.php
ローノーマルのRDは新しい技術としてトップノーマルを駆逐したわけではなく、「トップノーマル」「ローノーマル」の2ラインナップが選べたようです。
今でいう「RDはSSかGSかどっちにする?」みたいな感じでしょうか。
シマノも元々はトップノーマルRD→(MTBデュアコンの登場により)ローノーマルRDも誕生→のちにトップノーマルのみにという流れです。
2種類ある…というのもですね、ローノーマルのリアディレイラーはMTB向けデュアルコントロールレバーに最適な組み合わせとしてシマノが推していた商品っぽいのです。
「ローノーマル」が誕生した960系XTRですが、同時に「MTB向けデュアルコントロールレバー」も一緒に誕生したのです。
これが誕生の経緯になります。
MTB向けデュアルコントロールレバーとは?
MTB向けデュアルコントロールレバーとは何だ?
ロードバイクのSTI(デュアルコントロールレバー)でなくて?
と思った方が大半でしょう。
それもそのはずで、今ではもう使われなくなったテクノロジーだからです。
MTB向けデュアルコントロールレバーはSTIレバーとは全く違います。
形状は今のラピッドファイアと似ており、ブレーキレバーにシフトが一体になったものですが…
この「ブレーキレバー」を上下に押したりあげたりすることで変速ができるのです。
>>http://park20.wakwak.com/~toukatsu/XTRDual.htm
だからシフトレバーは付いていません。あるのはブレーキのレバーが一本だけでして、
- グッと握ればブレーキがかかる
- 上下に押せば変速ができる
→レバーを下に押し込めばワイヤーの巻き取り(トップ側へ)
→レバーを指の背で上に上げてワイヤーの巻き戻し(ロー側へ)
という、まさにデュアルコントロールができるレバーだったのです。
ただ、実はラピッドファイアのようにシフト用のレバーが一つだけ付いています。
これは「補助レバー」といって、親指で押すとメインのレバーを中指などの背で跳ね上げるのと同じ動きをします。
ローノーマルRDのメリット(使われた経緯)
MTB向けデュアルコントロールレバーに合わせてローノーマルRDが誕生したのは、「実践の場(MTB)において、よりスピーディーな変速をするため」だと思います。
MTBではとっさに軽くできる操作性を重視し…
レバーに力を入れてワイヤーを巻き取るよりも、レバーを押すだけでワイヤー巻き戻し、ローギアの方へ向かう「ローノーマル」が採用されたっぽいです。
>>http://blog.livedoor.jp/tyonnmage2013/archives/20111954.html
例えば、今のトップノーマル×STIレバーでイメージすると分かりやすいです。
当然、トップギアへ入れる方(巻き戻し)ですよね。
引っ張っているワイヤーを戻すだけなので軽いです。
ローノーマルRDはローギアへ行くときの労力が少なくなる。
ローギアを優先した設計…ということでしょう。多分。
ローノーマルRD、MTB向けデュアルコントロールレバーはなぜ廃止?
しかし、見ての通り現在では「MTB向けデュアルコントロールレバー」も「ローノーマルRD」も姿を見せません。見ることがありません。
中々ユーザーに好まれず、定着せず、廃止になったからです。
廃止になったのは980系XTRから順次。
同シリーズは2010年から誕生したので、8年ちょっとは使われたのでしょう。
同社がそれまで積極的に推進してきたMTB向けSTIレバーと、ローノーマルリアディレーラは完全に廃されている。
ちなみに、最後のローノーマルRDとなったのはM770系のデオーレXTでして、~2012年まではMTB向けデュアルコントロールレバーも存在していたようです。
廃止になった理由(当時の口コミ?)を探ってみたところ、
てな意見が多くあったようです。
何はともあれユーザーに気に入られることなく、MTBデュアコンとローノーマルRDは廃盤になりました。
以上でRDのローノーマルに関するお話しは終わりです。
なぜか今になっても売られているMTB向けデュアルコントロールレバーを見つけました(笑)
過去にはフロントディレイラーの「トップ(アウター)ノーマル」が存在した?
今回、ローノーマルRDについて調べていたところ、過去には「トップ(アウター)ノーマル」のフロントディレイラーがあったことを知りました。
今はロー(インナー)ノーマルですよね。
ワイヤーを張ればアウターに移動します。その逆があったというのです。
ついでに触れようと思います。
見つけたのはこちらのブログ。サイトの作りから見ても大大大先輩です。
このブログの文面から推測するに、「70年代後半以前はトップノーマルのフロントディレイラーが割と使われた(特にサンツアー?)」と思われます。
「70年代後半からローノーマルのデュラーエースが出てきた」ということは、それ以前はトップノーマル…だったのでしょうかね?
ただ「それ以前」と言っても、73年にでたデュラエースが初代で、2代目は78年から。つまり70年代後半です。
もしかすると初代デュラのみアウターノーマルのFDだったのかもしれません。
>>https://www.shimano.com/jp/100th/history/products/14.php
さいごに
- 「ローノーマル時代があったこと」
- 「MTB向けのデュアコンが存在したこと」
歴史をたどってみると結構面白いですね。
僕自身も知らない事ばかりでした。
ローノーマルという言葉を知ったところで、正直今では使うシーンが無いと思います。
ただ、最初にも言ったように「自転車の知識を深めたい方」や「業界人」なら知っておくに越したことは無いでしょう。
実際僕も、ローノーマルの存在を知っていたからこそ、アルバイトの方からの説明に答えることができましたから。
「そんなのもあったんだ」程度に覚えておくと、いずれ使うことが来るかも?
お読みいただきありがとうございました。