(ロードバイクやクロスバイクなどの)スポーツタイプの自転車に乗っているんだけど、ハンドルの高さを変えたり、角度を変えたりするにはどうしたらいいの?
初心者の私にも分かるように教えて欲しいなあ。
こんな悩みを解決します。
- ハンドルの「角度」を調整する方法
- ハンドルの「高さ」を調整する方法
- 調整で使う工具
- トップキャップの締め付けトルク
- ステムの締め付けトルク
- ハンドルにガタツキがある時の対処法
自転車整備士の私が解説します。
本記事を見れば、自分でハンドルの調整が可能になります。
ステムの種類を確認
本題へ入る前に「ステムの種類」を確認して下さい。
本記事で調整に使うステムは「アヘッドステム」というものです。
ステムとは自転車の「首」にあたるパーツのことで、2種類あります。
↑スレッドステム。ママチャリもこれ。
↑アヘッドステム。スポーツバイクは大体こっち。
記事のタイトルには「ロードバイク/クロスバイク~」と書きましたが、これは検索で見つかりやすいよう書いたものです。
実際は車種ではなくてステムの種類で調整方法が変わります。
使用する工具
ハンドルの高さ/角度の調整では、ステムのボルトを触ります。
使用する工具は下記の2種類が多いです。
- 六角レンチ4mm
- 六角レンチ5mm
ただステムによって変わるため一概には言えません。
他にも例えばこんなものがあったりします。
- トップキャップやステムボルトに「六角6mm」を使うもの
- ステムのボルトに「トルクスレンチT25」を使うもの
お使いのステムを確認の上、工具を用意してください。
様々な工具がひとまとめになった「携帯工具」があれば、基本的にハンドルの調整は可能です。
【ロードバイク/クロスバイク】ハンドルの“角度”を調整する方法
始めに「角度」の調整方法から解説します。
「高さ」の調整のみ知りたい方は、次の項目まで飛ばしてOK。
全体の流れは下記の通り。
…順に解説します。
ハンドルを固定している4本のボルトを緩める
ハンドルを固定しているステム前方についたボルトを緩めていきます。
ボルトの数は4本が標準ですが、2本の場合もあります。
基本的に「六角レンチ4mm」を使うことが多いです。
緩める時はどのボルトから緩めても構いません。
※後で解説しますが、締める時には順番があります。
だいたい4本の緩め具合が均等になるように、ボルトを緩めていきます。
ボルトは緩めるだけでOK。完全に抜く必要はナシです。
ゆるゆるの状態になっていればハンドルが動くはずです。
好きな角度に設定する
ゆるゆるのハンドルを「好きな角度」に調整し、手で支えておきます。
この時、ハンドルがしっかりと真ん中にセットされているか確認してください。
ハンドル側に何かしらの目印があると思います。
※中には無いものもあります。
↑このステムは「〇の中に+」のマークがハンドルの中央です。
ステムの真ん中に来るよう調整します。
ボルトを締めて固定する
ハンドルの角度が決まったら、その状態をキープしながらボルトを締めていきます。
ボルトの上側、下側…どちらかだけが締めすぎているとならないよう、隙間が均等になるように調整をします。
この隙間が均等ではないと、ハンドルが緩みやすくなります。
【重要】
そして4本のボルトを本締めする際(最後に締める時)は、「締める順序」があります。
対角線上のボルトを一本ずつ締めてください。
この順番で本締めしないと、ボルトを締めた後に緩みが生じるからです。
ボルトの締め付けの力加減について
ボルトってどのくらいの力で締め付ければいいの?
…という疑問に答えます。
結論、締め付けトルク(力)はステムに書いてあることが多いです。
例えば↓この写真のステムを見てみましょう。
「48lbf.in」「5.5 N.m」という表記がありますが、これがボルトの締め付けトルクを表しています。
指定された締め付けトルクにしたがって、締め付け加減を調整します。
※中には表記がないステムもありますが、大体「5-6Nm」あればハンドルをしっかり固定することができます。
締め付けトルクを確認するには
で、その「締め付けトルク」はどうやって確認したらいいの?
…と思いますよね(笑)
結論「トルクレンチを使ってください」としか言えません。
ボルトの締まり具合を測る機械ですね。
ブログでは、文字では、中々締め付け力を伝えるのは難しいからです。
トルクレンチを使えば「力」という目に見えないものを数値化できるので、より安全に作業ができます。
特にカーボンハンドル、カーボンパーツの締め付けを行う際はトルクレンチが必須です。
カーボンは繊細なので、力加減を間違えるとパキッと割れてしまうからです。
ご自身でいろいろな調整をするのであれば、「力加減」を知ることは非常に大切です。モノを壊してからでは遅いですし、緩んで大怪我してからでも遅いです。
一つ持っておくと安心なので、よければ使ってみて下さい。
荷重してズレないか確認する
最後にハンドルへ荷重し、動かないか確認します。
締め付けが緩いとハンドルがグルッと回って危険ですから、絶対にチェックをしてください。
【ロードバイク/クロスバイク】ハンドルの“高さ”を調整する方法
次にハンドルの「高さ」を調整する方法について説明します。
角度調整よりも難しい作業になりますかね。
全体的な手順は下記の通り。
ステムを一度抜いて、スペーサーを入れ替えることで高さの調整が可能です。
順にやっていきましょう。
ステムを固定している2本のボルトを緩める
ステムの↑ここにある2本のボルトを緩めます。
六角レンチの4mmか5mmを使うことが多いです。
ゆるゆるの状態にしました。
この時点でハンドルとタイヤ(フォーク)が別々に動くようになります。固定が外れました。
トップキャップボルトを緩めて抜く
ステムの上にある「トップキャップボルト」を緩めます。
特に注意事項はないですね。ただ無心にボルトを抜ききればOKです。
ボルトが緩み切ったら、トップキャップと一緒に抜いてください。
ステムを一度抜く
この状態でステムを上に持ち上げれば、ハンドルがスポッと抜けます。
(慣れたら片手でハンドルを持ちながら、もう片方の手でスペーサーを調整していきます。)
最初は慣れていないと思うので、とりあえずこんな感じでハンドルをだらーんとさせておいてください。
※ワイヤーに過度な負荷が掛かって曲がらないよう注意です。
スペーサーで高さを調整する
ここから高さの調整です。
スペーサーをステムの上か下か、どっちに置くかでハンドルの高さを変えられます。
↑スペーサーというのは、ここに入っているリング状のやつです。
高さを出すためにあります。
例えばこの写真の状況だと、「ステムが一番上」に来ていますよね。
※ステムの上にはスペーサーが乗っておらず、全て下に入っています。
※一応、ステムを上下逆さにすればあと少し高くなります。
つまりこの写真の場合だと「下げる」ことしかできません。
自転車を買った状態のままなら、基本的にハンドルは一番高い位置にあると思います。
↓ステムの位置を下げる時は、下げたい分だけスペーサーを抜き取ります。
今回は「下げる」方向で解説してますが、既にステムの上にスペーサーが乗っている場合は「上げる」ことも可能です。
スペーサーをステムの下に移動させればOK。
ステムをはめ、トップキャップボルトを締める
↑下げたい分のスペーサーを抜いた状態で、ステムを差し込みます。まだボルトは締めなくていいです。
↑そして下げるために抜いた分のスペーサーを「ステムの上」に乗せてください。
抜いたままだとステムの固定が行えません。
トップキャップ&ボルトを差し込み、締めていきます。ここが難しい。
【超重要】
トップキャップボルトは「固定」をするためのボルトではありません。
「調整」をするためのボルトです。
下記の2点が満たされる状態になるところ締めていきます。
- ヘッドのガタツキはないか?
- ハンドリングはスムーズか?
ヘッドのガタツキはないか?
このボルトは、実はフォークを引っ張ってベアリングとの玉当たりを調整するボルトです。
締め付けが緩いとそこに隙間が出来るので、前後に揺らした時にハンドルがグラグラ/カタカタします。
ひとまず「ガタツキ」が無ければ第一条件クリアです。
ただ締めすぎの可能性もあるので、次に「ハンドリング」を確認します。
ハンドリングはスムーズか?
- ガタツキも問題なし。
- ハンドリングも問題なし。
上記2点が満たされる状態まで締めれたら、トップキャップボルトの調整は以上です。
ステムを固定している2本のボルトを締める
ステムを固定する前に、「ハンドルとタイヤが真っすぐか?」を確認してください。
片目をつぶると分かりやすいです。
最後にステムを固定します。
↑ここには2本のボルトがありますが、これを交互に締めていきます。
例えば「10」が固定状態(指定トルク)なら、「5-5」「8-8」「10-10」みたいな感じで、徐々に均等に締めます。
間違っても最初から「10-10」で締めようとしないで下さい。
締め付けが緩まるからです。
例えばいきなり[10-10]で締めると、2本目のボルトを締めた段階で、1本目のボルトが「6」くらいに緩まります。
適切な締め付けトルクにならないので、必ず交互に徐々に締めてください。
最終確認
ステム側面にある2本のボルトを締め付けたら、全ての作業が終了です。
最後に、下記3点について再チェックをしましょう。
…問題がなければ大丈夫です。お疲れさまでした!
【補足】構造を知りたい方へ ~なぜハンドルのガタツキが出るのか~
トップキャップボルトの締め具合でハンドリングが悪くなったり、ガタツキが出たりするのはどうして?
今回の作業をもっと深く理解したい方へ向けて、簡単に構造を説明しようと思います。
ハンドルの調整でイジった「フォークコラム」には、ステムやスペーサーだけではなく、実はたくさんのパーツが付いています。
いわゆる「ヘッドパーツ」ってやつです。
出典:https://masahiru5003.hatenablog.com/entry/2018/04/05/190000
中でも重要なのが「ベアリング」の存在です。
ヘッドの上下にはベアリングが装着されており、これがあるおかげで軽い力でハンドルを動かすことができるわけなんですね。
先ほどの「トップキャップボルトを締める作業」というのは、実はベアリングへの当り調整なのです。
ボルトを強く締めるとハンドリングが悪くなるのは、ベアリングに対して圧力をかけすぎたことで、ボール(ベアリング)の転がりが悪くなるからです。
逆にボルトの締め付けが緩いとガタツキが生じるのは、ボールに対して適正な圧力がかかっておらず、遊び(隙間)ができているからです。
だから「ガタツキが無いか」「ハンドリングがスムーズか」の2点を満たす力加減で締める必要があるのです。
さいごに
本記事を読んで、実際に「できた!」という方が一人でもいれば嬉しく思います。
ハンドル/ステムの調整は再確認がとても重要です。
ここらのボルトが1本緩んでいるだけで大事故に繋がりかねないので、締めたと分かっていても「再チェック」を怠らないようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!